毎日新聞 2007年12月12日に「わたしとおかあさん」とコーナーで掲載されました。
◇「ゼロからのスタートが原点」--柳岡克子さん(43)
「ゼロからのスタート」。母のこの言葉が今も私の生きる原点になっています。
私は御坊市で生まれました。しかし、仮死状態だったため、肢体関節拘縮病という難病になり、和歌山市内の病院に入院することになりました。当時、母はバス会社の事務員をしていたのですが、私に付き添うため辞めました。リハビリやマッサージを繰り返す日々。母は、懸命に介護をしてくれたそうです。
2歳になって退院することができ、御坊に戻りました。手足は病気の影響で不自由でしたが、自宅近くの幼稚園に通うことになり、母がバイクで送り迎えをしてくれました。私をバイクの前に乗せて、運転する母の姿は、「かっこいいなー」と思っていました。
小学校に進む際に、学校側から養護学校を薦められました。当時、養護学校は和歌山市内にしかなかったので私たち家族はどうするか迷いました。母のおなかの中には弟がいたので、私と和歌山市内に住むのは無理でしたから。結局、私専用のポータブルトイレを設置することなどで、御坊市の学校が受け入れてくれたのです。
やはり母がバイクで送迎をしてくれましたが、私の体が大きくなり、バイクの前に座っていると母が前を見ることができなくなりました。母は車の免許を取ることにしました。父は猛反対しましたが、私のためだからと説得したのです。
でも、中学に進むころになると、母の送迎が面倒に思うようになりました。放課後、友達と一緒に勉強したり、道草もしたいと思うようになったからです。母が運転する車の中で「なんでこんな体に生んだんだ」と恨んだこともありました。
大学に進み、教員免許と薬剤師の資格を取得。卒業後は御坊に戻り、お世話になった人たちに恩返しをと、学習塾を開くとともに、薬局に勤めました。
健常者の人は、最初に60%の幸せを持っていたら、残りは40%です。私のように障害者はゼロからのスタート。目標を達成できたら100%になります。母はこのことを教えてくれました。生きる喜びを教えてくれた母の子どもとして生まれ、よかったと感謝しています。【聞き手・山中尚登】
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■人物略歴
◇やなおか・よしこ
1964年、御坊市生まれ。神戸学院大薬学部卒業。学習塾経営、薬剤師。県身体障害者連盟理事も務める。
投稿者プロフィール

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車いすの元気配達人として全国講演活動をしています。子どもから大人まで90分のお話しがあっという間だったと好評です。そのバイタリティーがどこから来るのか実際聴いてみてください。
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